多田消化器内視鏡クリニック

2022.02.06

胃カメラ・大腸カメラを受けるタイミングと適切な検査間隔とは
これまでのブログでは、診療中に説明することの多い疾患・用語について教科書的な内容を中心に分かりやすく解説してきましたが、だいぶネタも尽きてきたので・・・、今回は志向を変え、診察室でちょくちょく質問される「胃カメラ・大腸カメラを受けるタイミングと適切な検査間隔」について、たっぷりの私見を交えてご説明したいと思います。


まずは検査受診のタイミングです。

症状があって医療機関を受診された方はそのタイミングで検討されると思いますが、問題は「健康で症状も何もないが、何歳ぐらいになったら検査を受けるべきかな?」と悩んでおられる方ですよね。
胃カメラ・大腸カメラを受けていただく最大の目的は「「がん」が無いことを確認する」、あるいは「できる限り早期に発見する」ことです。「がん」ができていても、かなり進行するまでは無症状であることがほとんどです。年齢とともに発がん率も上昇しますから、無症状であっても適齢期になれば皆が検査を受けることが理想です。


一つの目安は、自治体が行うがん検診です。
堺市では「胃がん検診」は50歳から、「大腸がん検診(検便)」は40歳から受けられます。
ですので、胃カメラは50歳になったら、大腸カメラは40歳になったら受けてみることを検討するのが良いと思います。



胃カメラについてはもう一つ考え方があります。
胃がんは、ピロリ菌に感染しているか、いないかで発生率に大きな差があります。感染していない胃には、ほとんど胃がんはできません(ゼロではありませんので、誤解ないように)。
堺市では35歳から「胃がんリスク検診」を受診でき、ピロリ菌感染の有無を確認できます。
血液検査だけの簡単な検査ですので、まず35歳で「胃がんリスク検診」を受け、ピロリ菌に感染していなければ、急いで胃カメラを受けなくても良いと思いますが、感染していた場合はピロリ菌を駆除して胃の荒廃を阻止し、胃がんになる確率を下げるために直ぐに胃カメラを受けるべきと考えます。



大腸カメラに関しては、無症状なのに40歳で受けようと思う方は多くないと思います。
しかし、開院から3年弱の間に当院で大腸カメラを受けられた40歳前後の方にも多くのポリープが見つかり、中には早期がんであった症例もありました。
進行がんが判明したのは多くが高齢者でありましたが、そのほとんどはそれまで一度も大腸カメラを受けておられないか、検査歴があっても10年以上昔でした。

40歳の自分の腸の中にポリープがあることをイメージしてください。症状もないし健康だと思い込み60歳まで検診を受けることもなく過ごします。その間に、静かにポリープは成長し、やがてがん化していきます・・・。ある頃から、便に血がついていることに気が付き病院を受診したら、「進行がんです」と告げられる・・・。

これは決して誇張した話ではなく、進行がんが見つかってしまった方からよくお聞きする話です。
大事なポイントは、大腸がんは基本的に、ポリープが時間とともに徐々に大きくなって、ある時「がん化」し、さらに成長して他の臓器へ転移し命を奪ってしまいますが、逆に言えば、ポリープの間に摘除してしまえば、がん化を予防することができるということです。

いきなり大腸カメラとまではいわなくても、せめて検便は受け、「要精密検査」の結果が出てしまったら、「ウンチ硬かったし、おしりでも切れたのかな」と流してしまわないで、きっちりと大腸カメラを受けるようにしてください。

当院では大腸カメラの検査中にポリープを取ってしまうことができますし、日帰りです。ポリープが小さい間のほうが切除もしやすく、治療に伴うリスクも少なくて済みますので、早いうちに一度は受けることをお勧めします。



あと、よくお聞きするのは、うちはがん家系で・・・というお話です。
これに関しては、乳がんなどとは違い、胃がん・大腸がんで遺伝性のものは極めて稀です。
ご家族にがんを患った方がおられるからと言って、ご自身もそのリスクが高いというわけではありません。
しかし、「病は気から」とも言いますし、心配なお気持ちがあるのであれば、前述した推奨受診年齢より5-10歳早めに、一度検査を受けておくのが良いかもしれませんね。



続いては、一度検査を受けた後の次回検査の推奨時期についてです。

胃カメラでは、前述のようにピロリ菌によってどれだけ胃が荒れているかで胃がん発生率に差があるため、胃の荒れ具合によって推奨検査期間を定めています。
詳しくは「疾患紹介編 #7:萎縮性胃炎」をご覧いただきたいのですが、
胃の荒れが軽い人は、 3年ごと
胃の荒れが中等度なら 2年ごと
胃の荒れがひどい人は 1年ごと
としています。


胃がんはピロリ菌が感染していなくても突然出てくることがありますので、感染が無くても5年に1度程度は受けておかれることをお勧めします。


ちなみに、大腸とは異なり、胃のポリープが「がん化」をすることはあまり無く、むしろ、胃底腺ポリープの場合は、それがあれば胃がんはできにくいとされています。
過去の検査で、「ポリープがあるよ」と言われても、「すぐに病院で治療を受けなさい」と言われていない場合は、ほとんどが胃底腺ポリープだと思われます。(詳しくは「疾患紹介編 #8:胃ポリープ」をご覧ください。)
一度は胃底腺ポリープで間違いないかを確認するために胃カメラを受けていただきたいですが、以降は3-5年に一度程度の検査で問題ないと考えます。



大腸カメラでは、前回検査時の結果を目安に、次回検査時期を定めています。
詳しくは「疾患紹介編 #9:大腸ポリープ」をご覧ください。

担癌率が高いといわれている以下の条件に当てはまる方は1年後が推奨されます。
・ポリープが6個以上あった方
・10mm以上のポリープがあった方
・管状絨毛腺腫または早期がんがあった方

上記以外の方でも初回検査であった方は、大腸はクネクネ曲がっているうえにヒダが多く小さな病変は見落としてしまうことがあり得るため、見落とし削減目的で3年以内にもう一度受けておくことをお勧めします。

2回以上受けられた方に関しては、ポリープを取りつくした大腸に、新たにポリープができて、それが「がん化」するまでにはかなりの時間がかかると考えられるため、私見としては5年以降の再検査で充分であると考えています。



よく、「ポリープがあるから毎年胃カメラを受けるように勧められた」とか、「過去に大腸ポリープを取ったことがあるから、以後は毎年受けるようにしている」といったお話を耳にします。毎年検査を受けることが悪いことでは無いのですが、やりすぎかなと思います。

検診検査は、「がん」を早期発見することが目的の検査です。
「がん」は1年やそこらではできません。普通は数年以上の月日を経て成長するものです。
「がん」が見えるようになっていない時期に検査を行っても得るものはなくただ、「時間」と「お金」を消費し、無駄な「リスク」を抱えることになるだけです。
特に「お金」にかんしては、医療保険を用いてのものであるため、医療費抑制の観点からも不要な検査は控えるべきです。
上記の指標をもとに、各自の適正な検査期間を改めて見直して頂ければと思います。